2023/02/11 Sat
fusekido Ohyama wrote
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蕎麦が日本で食されるようになったのは縄文時代からという。当初は粒のまま雑炊のようにして食されていた。その後鎌倉時代になると、石臼が中国から伝わることで粉にして蕎麦をいただくようになったが、麺になるまではまだ先の話。
江戸時代になると、火消しや奉公人、左官、大工など忙しく働く江戸っ子にすばやくお腹を満たすことができる麺の蕎麦はウケた。
そばは日本を代表する食であるが、あまり食べる機会がないのも事実。中華そばの店はたくさんあるのに。
そばは栽培が難しいのであろうか。どうやらそばは成長が早く、年に二回ほど収穫でき、病気も少ないと聞く。もともとは水はけのよい、稲が収穫できない土地で主食とされていたようだ。
同じように水はけがよい環境で育つ作物として、小麦がある。小麦はパン、うどん、餃子の皮など用途は幅広い。蕎麦は蕎麦として食べる用途が限られるために収穫量が少なく、価格上昇につながっているのではないか。小麦は世界中で栽培されているので安い輸入品が入り、より低価格で小麦を使用した製品が蕎麦を圧迫する。ついには蕎麦に小麦をつなぎとして使われているほど、小麦は優勢である。
蕎麦を食べる文化を失ってはならない。かつての江戸っ子のようにそばを嗜み、明日を生きる糧にしようではないか。
今回伺ったのは、下野市の自治医科大学に近い、「めん亭 たくみ」。
暖簾を手前には、手打ちの現場がガラス張りで確認できる。かなり大きなディスプレイでそば粉にまみれた設備が蕎麦にかける思いを物語る。
店内はまさに昭和の古き良き居酒屋。作られたみせかけの昭和ではなく、昭和そのもの。古くから商売をつづけて年季がはいった店内は、ベテラン中継ぎ投手のように、ルーキーのような派手さはないかもしれないが、角がとれて自身の強みを理解し、ここぞというところできっちり抑える、まさにいぶし銀である。
ここまで完璧な昭和居酒屋系のお店は、逆に珍しい。グルメ雑誌に「昭和を味わう」的な特集で一面を飾りそうなものだ。
頂いたのはランチ900円で提供されていた豚バラ蕎麦、炊き込みご飯付きだ。長ネギが入ったそばつゆに豚バラとそばをいただくことで、そばの香りと肉のうまみが同時に楽しめる。蕎麦屋だからざる蕎麦しかださないような固い商いはしない。店を埋め尽くす客たちは周辺で現場作業をされている屈強な男たち。彼らのニーズをおさえた、豚バラおおめの蕎麦。
もちろん10割そばも提供されており、そばの香りをしっかり味わいたい人向けのメニューもある。しかし来店される方が望むがっつり系の蕎麦定食もラインナップに用意する。この柔軟な対応が明日の商いを支えていくのだ。
これが想像を上回るこだわりの逸品であった。
なかなか味が乗りにくい炊き込みご飯であるが、鶏むね肉、油揚げの配分が絶妙。そしてしょうがも一緒に炊き込んでいるようである。このアクセントが炊き込みご飯の立ち位置を確固たるものとした。単調しがちな炊き込みご飯というカテゴリをショウガというスパイスを加えることで、まるでオーケストラにおける打楽器のように、炊き込みご飯がもつ旋律を補強する。
この炊き込みご飯をもう3合ぐらい頂きたかったところであったが、そば湯を飲むと落ち着いてしまった。
女将「あなた、声が通るね。何かスポーツやっていたのかい?」
おーやま「水泳です」
女将「声出さんスポーツかーい」
蕎麦屋の世界もまた、奥が深い。
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